2019年11月の記事一覧
所高祭
みなさんこんにちは、地学部です。
2019年9月7日と9月8日、所沢高校では毎年恒例の所高祭が行われ、
多くのお客様にお越しいただきました。
地学部では「ほしヲふしぎ発見!」と題し、企画展示とプラネタリウム紹介を
おこないました。総勢252名の皆様にお越しいただき、盛況となりました。
↑ 地学部では、鉱物の展示や宇宙の太陽系の再現、富士山の噴出物の分布の紹介、地震計、恐竜についてなど
多種多様な展示を行いました。地学室には専門的な機械がたくさんあります。
↑ 地学室の後方には、プラネタリウムがあります。
15人ほどが入ることができ、ちいさな子供たちから保護者の方まで多くの方に
秋の星座について説明させていただきました。
↑ 台の上に並んでいるのは恐竜たちです。
恐竜に関する説明書きは直前に準備しました。
↑ 太陽系の惑星のモデルは重さと大きさが実際の日と同じになっているので、
質量感を体感することができます。
地学部では来年も企画展示を行う予定です。
文化祭にご来校いただいた皆様、誠にありがとうございました。
2019年 地学部夏合宿 富士山
私たちは、7月30日から8月1日に、富士山で2泊3日の夏合宿を行いました。
富士山は、現在活発な火山活動は起こっていませんが、過去に何度も噴火している、いつまた噴火してもおかしくない活火山です。今から約300年前の1707年(宝永4年)12月16日~翌年1月1日、現時点で最後の富士山の噴火、宝永噴火が起こりました。また、噴火の49日前、同年10月4日に付近で宝永地震(推定マグニチュード8.6~9)が起こっており、この地震に誘発されて噴火したのではないかと考えられています。
そのころ、日本は江戸時代の中ごろで、徳川家の5代将軍、徳川綱吉が君臨していました。当時世間では綱吉の悪政で噴火した、などと言われたようです。
今回の合宿は、この宝永噴火をテーマにして行いました。
↑北側から見た富士山。この写真は一昨年の合宿で撮ったものなので、今年はこの撮影地点には行っていない。
1日目は、富士山の東側にある御殿場口新五合目で、宝永スコリアと軽石の観察をしました。
スコリアと軽石は、共にスカスカで、文字通り水に浮くほどの軽い石で、園芸によく使われます。両者の違う点は、スコリアが黒っぽく、二酸化ケイ素(SiO2)の量が少ないのに対し、軽石が白っぽい色をしていて、二酸化ケイ素の量が多いところです。つまり、下の写真では左がスコリア、右が軽石です。これらがスカスカになるのは、マグマが地下深くから上昇する際、温度が下がるにつれて圧力も下がり、沸点が下がって水分が発泡したことによります。
宝永噴火の際は、まずが軽石が先に噴出し、時間が経つにつれてスコリアが噴出するように変化していった、よって噴出する岩石はデイサイト質(SiO2多い)から玄武岩質(SiO2少ない)になっていったと考えられています。
なぜ時間が経つにつれて二酸化ケイ素の量が変化したのか、それは結晶分化作用(温度による分離)によるもの、別々のマグマだまりから噴出したことによるもの、その両方によるもの などが考えられています。
↑宝永スコリアと軽石
↑地層発掘中、この場所の下側に御殿場口新五合目の駐車場がある。標高は1400mほど。地面が黒色だが、これは黒土の黒ではなくではなくスコリアの黒である。
↑地層は下にあるものほど古いので(地層累重の法則)、もとの地面の黄土色の層、宝永噴火の際最初に降った白い軽石の層、後から降った黒いスコリアの層と積み重なっている。
2日目は、富士山の南東にある宝永火口の観察をしました。
宝永火口は、宝永噴火の際に形成された火口で、ここから火山灰、スコリア、軽石などが噴出しました。宝永火口は、富士山頂側から第1、第2、第3と3つあり、第2と第3、第1の順で噴火しました。
一番大きい第1火口は直径1300m、底から上までの高さは125mほどあります。また、宝永噴火の際には、富士山の側火山である宝永山が形成されています。
↑左の窪みが第1火口、右は第2火口、写っていないがさらに右に第3火口がある。このあたりの標高は2450mほどあり、埼玉県の最高峰、三宝山(標高2483m)とほぼ同じ。
↑写真中央右のピークが宝永山(標高2693m)。第2、3火口の形成後に宝永山が形成した。
最終日の3日目は、宿周辺の地形地質の観察をしました。
この御殿場市には、流れ山と呼ばれる小高い山がいくつかある場所があります。これは、今から約2900年前、富士山の山体崩壊の際、御殿場泥流という土石流のようなものが発生し、それが途中で止まってその場所に溜まったものです。山体崩壊を起こした理由は地震、水蒸気爆発などの振動だとされています。
↑流れ山をいくつか確認できる。現在、流れ山は神社となっていたり、そのままだったりしている。
↑ちょっと掘ってみたり、流れ山の周囲を回ってみたりしたが、発見はなかった。
今まで、富士山の論文や資料を読む、観察するにとどまっていて、富士山が昔噴火したという実感があまりありませんでしたが、今回実際に現地に行くことによって、実感がわき、論文や資料の内容がよくわかってきました。大変充実した、そして楽しい合宿となりよかったです。この合宿で学んだことをもとに、富士山の知識を深め、新たな発見につながればいいです。
最後になりますが、今回の合宿は、静岡県御殿場市の農家民宿「このはな」さんを利用させていただきました。お世話になりました。そして、ピザ作りや作物の収穫等、貴重な体験をさせていただきありがとうございました。
↑「このはな」の建物。周りは畑と田んぼ。