校長日誌

2026年1月の記事一覧

冬の空と消えない足跡


2026.01.26  所沢高校グラウンド

 熱狂が去った後のグラウンドは、驚くほど静かだ。 52回目。今年もまた、この冬の空に、所高生の青い闘志が駆け抜けていった。

 ふと振り返る。 長い間ご指導いただいた駿河台大学の方々、体育科の先生。 声を枯らした女子生徒の応援。 そのすべてが、この3日間の景色を彩っていた。

 ・・・・・・・ 決勝、1年3組と1年9組。 対照的な、二つの意志があった。

 冷静に、パスで道を切り拓く3組。 泥臭く、執拗に、キックで活路を見出す9組。 何度も繰り返された、執念のディフェンス。 「死守」という言葉が、これほど似合う光景はなかった。点差はついた。 けれど、そこに敗者はいただろうか。試合終了を告げる、長い笛の音。 「ノーサイド」。

数分前までぶつかり合っていた身体が、自然と引き寄せられ、握手を交わす。 痛みを分かち合った者にしか分からない、静かな肯定。 あの瞬間に立ち上がった余韻は、今も私の胸を離れない。泥だらけのジャージを着た彼らの背中は、数日前より、少しだけ大きく見えた。

 ここは、彼らが「真の強さ」と出会う場所かもしれない。

0

終わらない探究、その先にある自由!

  夕闇が迫る校長室。 一人の生徒会の生徒が訪ねてきた。

 

  来週開催される、教師と生徒が対等に語り合う「連絡会議」の案内。 だが、その瞳に宿っていたのは、それ以上の何か。 「この大人と、どこまで深い話ができるか」 そんな知的な好奇心が、静かに、しかし確かに漂っていた。

  話は、所沢高校の未来へと及ぶ。 近年の進学実績。入学してくる生徒たちの学力の変遷。 日々の生活のあり方、そして、避けては通れない受験勉強の現実。驚かされたのは、その視座の高さだ。 高校生という枠組みを超え、大人と対等に渡り合うための礼節、言葉選び、そして相手の懐に飛び込むコミュニケーションの力。

  

 「この力があるからこそ、この子たちは『自由』を語れるのだ」

ふと、そんな思いが頭をよぎる。 所高が掲げる「自主自立」「生徒自治」。 それは決して、放任という名の楽園ではない。 自由の裏側にある責任。自らを律する厳しさ。 それらを的確に表現するための豊かな語彙を持ち、正解のない問いを、倒れずに探し続ける体力があるか。

 

  目の前の生徒は、まさにその体現者だった。 対話を楽しむ私の心に、確信にも似た風が吹き抜ける。

言葉を尽くし、自分たちの足で立ち、未来を切り拓こうとする意志。 この眼差しを持つ生徒が、ここにいる。

所沢高校。 こういう生徒がいるから、この学校は、所沢高校であり続ける。

0

52度目の共闘

  凍てつく空の下、今年もその幕が上がる。 埼玉県立所沢高校、1学年クラス対抗ラグビー大会。 52回を数える、伝統の「共闘」。これまで、数多のドラマがこの土に刻まれてきた。 試合終了間際、たった一つのチャンスを掴み取り、すべてを覆した逆転劇。 誰もが予想しなかった、無名のクラスによる番狂わせ。

  そこにあるのは、綺麗事だけではない。 敗北から何を学び、どう立ち上がるか。 その真価が問われる、一瞬の交錯。知略を尽くし、泥にまみれ、最後に行き着く「ノーサイド」。 その笛が鳴る時、彼らの瞳には何が映るのか。

明日、決戦の地へ。ナイスゲームを期待する!

0

【定時制】「二十歳の集い」に向けて

今年、本校定時制で5名の生徒が二十歳を迎えました。「二十歳の集い」でみんなででお祝いをしました。

以下、校長の祝辞の内容です。

 

新成人の皆さん、おめでとうございます。 今日、こうして皆さんの晴れやかな姿を迎えられたことを、教職員一同、心から嬉しく思います。 二十歳という大きな節目。皆さんが歩んできた道は、決して平坦なものではなかったはずです。

昼間は仕事に励み、夕暮れと共にこの学び舎に集う。あるいは、一度は違う道を歩みながらも、自分の意志でこの所高で再び学び直すことを選びました。 眠気と戦いながら机に向かった夜、仕事の疲れを押し切って登校した日、そんな一つひとつの積み重ねが、今の皆さんを形作っています。 「普通」とは少し違う、遠回りをしたと感じることもあるかもしれない。しかし、私はそうは思いません。皆さんは、自分の人生を自分の足で歩むという、何物にも代えがたい「自立」を一足早く経験してきたのです。

皆さんがこれまで流した汗や、抱えてきた苦しみは、これから先の長い人生において、すべて「心の栄養」となります。 これから先、壁にぶつかった時、「あの時、仕事と勉強を両立できた自分なら大丈夫だ」という自信が、皆さんを支えてくれるでしょう。 夜の暗さを知っている人は、小さな光の大切さを知っています。苦労を知っている人は、他人の痛みに寄り添うことができます。その優しさと強さこそが、皆さんの最大の武器です。

今日、この「二十歳の集い」を機に、新しいステージが始まります。 どうか、自分だけの歩幅で、自信を持って進んでください。この夜間定時制で灯した学びの火を、これからは社会を照らす光に変えていってくれることを期待しています。 皆さんの未来が、希望に満ちたものであることを心より願い、お祝いの言葉といたします。

0

現在をみつめ、感動のファイルを力に

・・・・・・・3学期始業式の校長訓話の内容です。

  皆さん、おはようございます。いよいよ3学期が始まりました。 3学期は1年の締めくくり、3年生にとっては高校生活の「まとめ」の時期です。

  皆さんに聞きます。自分の「ゴール」は決まっていますか?目的地にはたどり着けそうですか? スマホのナビアプリを使うとき、私たちは目的地を入力しますが、同時に必ず表示されるものがあります。それは「現在地」です。今、自分はどこにいてどんな状態なのか。ゴールを目指す前にまずは今の自分自身をしっかり見つめてみてください。

  さて、今日は「心の中にあるファイル」のお話をします。 この正月、私はデンマークに長く住んでいた友人と語り合う機会がありました。デンマークには「ヒュッゲ(Hygge)」という素敵な文化があります。家族や友人たちと、ゆったりと穏やかに語り合う時間のことです。

  そこで何をおしゃべりするのか。それは、自分の「経験」です。 「これが私の家族だよ」「この景色、すごく綺麗だったんだ」 そんな風に、自分が心を動かされた瞬間を分かち合います。友人は、この思い出の蓄積を「感動のファイル」と呼んでいました。

  私たちは本能的に、嫌なことや危険なことを強く記憶するようにできています。自分を守るためです。でも、だからこそ意識しないと、日常の中にある「小さな感動」は見落としてしまいがちです。

  何かに夢中で打ち込んだ日。

  誰かと何気なく笑い合った、穏やかな日。

  生まれたばかりの弟や妹が、自分の指をぎゅっと握ってくれた瞬間。

  それらすべてが、あなたの「感動のファイル」に保存されています。 もし今、ゴールが見えなくて不安だったり、自信を失いそうになったりしているなら、一度そのファイルを開いてみてください。これまでの歩みの中に、あなたを支える強さが必ず眠っているはずです。

  皆さんの「感動のファイル」には、まだまだ空き容量がたくさんあります。 この3学期、勉強や部活動、友達との関わりの中(受験もあるでしょう)で、新しいページを増やしていってください。

  当たり前だと思っている日常の中に、実は素晴らしい感動が隠れています。 自分の現在地を認め、ファイルにある「自分だけの宝物」を力に変えて、目的地まで力強く進んでいきましょう。皆さんが最高の形で1年を締めくくれることを期待しています。

 

0