校長日誌

2025年12月の記事一覧

指先で語る、もうひとつの言葉

  12月の冷え込みが嘘のように、その場所だけは特別な熱を帯びていた。 ギター部のクリスマスコンサート。

  扉を開けた瞬間に飛び込んできたのは、名前を呼ぶ観客の声と、それに応える生徒たちの輝くような視線だ。 驚いたのは、その一体感。 客席にいる友人や家族は、ただの観客ではない。リズムに体を揺らし、声を上げ、ステージの熱量を共に引き上げていく。それはもはや「応援」という枠を超え、会場にいる全員が一つのアンサンブルを奏でているかのようだった。

  ステージに指揮者が現れる。 その足取りは軽やかで、しかし確かな自信に満ちていた。 カメラがその表情をクローズアップするなら、そこには気負いのない、最高にクールな笑みが映っていたはずだ。彼女は一言も語らない。 無駄な動きを削ぎ落とし、ただそこに「佇む」。 けれど、その凛とした背中、落ち着いた眼差しが、何よりも饒舌に物語っていた。 観客への感謝。そして、今日この日のために積み上げてきた、自分たちだけの物語。

  私たちは、言葉を交わすことだけがコミュニケーションだと思いがちだ。 しかし、あの瞬間のこの子たちは違った。 表情ひとつ、指先ひとつ。その「佇まい」だけで、これほどまでに強烈なメッセージを放つことができるのだと、私に確認させてくれた。ギターの弦が震え、冬の夜空へと音が抜けていく。 そこにあったのは、技術の披露ではない。自分という人間を音に乗せて解き放つ瞬間。 きっとこの子たちにとって、このステージこそが、自分を真っ直ぐに表現できる場所なのだろう。

  素晴らしい時間だった。 言葉を介さずとも、心はあんなにも深く繋がれる。 鳴り止まない拍手の中で、少しだけ誇らしく、そして清々しい気持ちで会場を後にした。

 

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ひとりで歩くという自由

  北緯43度。オンタリオ湖から吹き付ける風は想像以上に冷たかっただろう。 けれど、その街の空気は、どこまでも温かいにちがいない。 カナダ・トロント。 多様性という言葉が、教科書の中の知識ではなく、呼吸をするように当たり前に存在する場所。

  そこで待っていたのは、全く異なるバックグラウンドを持つ二人との生活だった。 一人は情熱の国、ブラジルから。 もう一人は、遠くインド洋に浮かぶマダガスカルから。

  最初は、戸惑いの連続だったし、ホームシックにもなったと言っている。 食卓に並ぶ見慣れない料理、飛び交う異国のアクセント。 けれど、彼女たちと過ごす時間の中で、あることに気づかされる。 完璧な文法よりも、流暢な発音よりも大切なこと。 それは、「自分は今、何を考え、どう生きたいのか」という意志を言葉に乗せること。

  彼女たちと笑い、議論し、時に沈黙を共有する中で、 「英語」はただの科目から、世界と自分を繋ぐ「血の通った道具」へと変わっていった。

  一人で歩くトロントの街並み。 地下鉄の喧騒や、マーケットの活気。 地図を頼りに、あるいは直感に従って、一歩ずつ自分の足で進んでいく。 かつては誰かの後ろをついて歩いていた自分が、 今は、自分の意志で目的地を決め、自分の言葉で誰かに問いかけている。「自分一人でも、やっていける」 その小さな手応えの積み重ねが、いつしか揺るぎない自信という根を張ることになるのだろう。

  ・・・・・・彼女は、校長室に来て、留学から帰国したことを報告に来ました。

  帰国した彼女の表情には、もう迷いはない。 英語を学びたいという純粋な渇望。 そして、未知の世界へ飛び込むことへの、心地よい高揚感。何かを始めるのに、完璧な準備なんていらない。 挑戦するための土台は、あのトロントの冬の中で、もう十分に築き上げられた。

  あの街で過ごした日々は、過去の思い出ではない。 これからの彼女を支え続ける、一生消えない情熱の種火となるだろう。

 

 

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最高の挑戦ができる場所へ

・・・・・・・2学期終業式 校長講話の内容です。

  おはようございます。いよいよ2学期が終わります。

  今、皆さんの顔を見て思うのは、一言。「リスペクト」です。

  所高祭という大きな山を越え、長距離走大会、2年生は修学旅行、他にもたくさん行事がありましたよね。そして日々の部活動や授業。皆さんは本当に多忙な中、一つ一つの行事や学びに真剣に向き合ってきたと思います。結果がどうあれ、そのプロセスで見せた皆さんの努力に、私は心から敬意を表します。まずは、頑張り抜いた自分自身、そして支えてくれた周りの人たちに感謝の気持ちを持ってください。

  さて、昨日レジリエンスの講話があったので、復習みたいになりますが、ちょっと視点を変えて聞いていただければと思います。

  先日、バスケットボール女子日本代表のアンダーカテゴリーの鈴木ヘッドコーチとお話しする機会がありました。そこで伺った「ミス」と「失敗」の違いについて話をします。

 「ミス(Mistake)」とは不注意によるもの。集中していれば「できるはずだったこと」ができなかった状態です。  

 「失敗(Failure)」とは、できないことに挑戦した結果、うまくいかなかったこと。つまり「成長のためのチャレンジ」そのものです。

  こわいのは 、この二つを混同することです。挑戦した結果の「失敗」を、悪いことのようにとらえてしまうと、人は萎縮し、不安から「言われたことしかやらない」指示待ち人間になってしまいます。所沢高校で過ごす時間は、人生における「最高の時間」であってほしい。不安におびえる時間にするのはもったいない。そこで、皆さんに2つのことを伝えます。

  一つ。「失敗は、次に成功するためのデータである」と捉えること。 難しい問題に挑む、新しいプレーに挑戦する。そこで、うまくいかなかったたら、恥じることではなく、あなたが「難しいことにチャレンジしたという証」を残したということです。

  二つ。「君ならできる」と言い合える環境を、みんなで作ること。 誰かが新しいことに挑んでうまくいかなかった時、それを笑ったり責めたりするのではなく、「大丈夫、次がある」「ナイスチャレンジ!」と励まし合える環境を、この所高に築いていきましょう。他人を励ましても、乱暴なことを言っても、自分の脳は自分自身にも同じことを言っていると判断するらしい。だったら、他人を励ましながら、自分も励まそう!

 

  失敗はこわくない、失敗しても前に進むメンタルを持ってほしいと思います。

  最高の3学期をすごせるように、冬休みに身体もメンタルも整えておきましょう。

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唯一無二という、光・・・中学校訪問記

  

 

  

  先週から、市内の各中学校へ足を運んでいる。 前もっての約束もせず、突然訪ねるというこちらの我儘にもかかわらず、どの学校の校長先生も、驚くほど温かく私を迎えてくださった。 その懐の深さに、まずは心から感謝を伝えたい。

  校長室で交わした言葉は、どれも示唆に富んでいた。 教育現場の働き方、入試の在り方、そして私が身を置く「全日制と定時制が共にある学校」のこれから。 共に悩み、共に明日を考える時間は、私にとって何物にも代えがたい豊かなひとときであった。

  嬉しいことに、私たちの学校を志す子供たちが、一定数はそこにいるという。 ある校長先生は、わが校を「唯一無二」と呼んでくださった。 「自由」や「十人十色」といった言葉に、中学生たちは今いる場所とは違う、まだ見ぬ世界への光を感じ取っているのだろう。その純粋な期待を、大切に守っていきたいと思う。

  わが校の生徒たちの活動も、私の背中をそっと押してくれる。 能登の被災地へ駆けつける者。特別支援学校で楽器を奏で、バトンを振る者。児童館で子供たちと科学の不思議を分かち合う者。 地元の企業と手を取り合い、社会の仕組みを肌で学ぼうとする生徒もいる。 彼らが外の世界へと手を伸ばし、誰かのために汗を流す姿は、実に清々しく、誇らしい。

  まだ、お会いできていない先生方がいる。 次の扉を開けたとき、どんなお話が聴けるのだろうか。 少しばかり歩き通しではあるが、楽しみは尽きない。

この温かな出会いの旅を、もう少しだけ続けてみようと思う。

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最高の先生を目指す君へ

 

  数週間前の夕暮れ時、あの緊張感に満ちた面接練習の日を鮮明に覚えている。数々の困難な問いに立ち向かい、自分の経験を言葉にしようと必死だった生徒の姿。その集大成となる試験を終え、彼女は静かに、しかし確かな自信を携えて、校長室に戻ってきた。

「合格しました。」

  その報告は、大声でも、浮かれた調子でもなく、ただ静かだった。深く、落ち着いた眼差しは、彼女がこの受験を通して、一つの大きな挑戦を乗り越えたことを物語っていた。

  初めて校長室に入ってきた時の、多少の緊張と戸惑いを含んだ表情とはまるっきり違う。合格という結果以上に、その「報告する様」が、私には何よりも嬉しかった。

  彼女は、自分が何を成し遂げ、何を学んだかを深く理解している人間の顔をしていた。地域の教育連携、能登の被災地支援といった、実社会での活動を言葉にする過程は、単なる知識の確認ではなく、自己との対話だったはずだ。あの面接練習で、彼女は自分の内側にある真の情熱を引き出し、それを凛とした自信へと昇華させたのだろう。一人の人間として、深く成長したことを感じさせる瞬間だった。

  しかし、これはまだ終着点ではない。彼女自身が最もよく理解していることだろう。

  大学への入学許可は、最高の先生になるという彼女の夢を実現するための、スタートラインに立てたということに他ならない。これからの4年間、彼女は専門知識を身につけ、教育者としての倫理観を磨き、多様な子どもたちの未来を支える力を養うことになる。

  ここからが本番だ。

  私たち教師は、教え子の才能を開花させる手助けをする。そして、教え子が自らの夢に向かって走り出した今、私たちは静かに、しかし熱いエールを送り続ける。

彼女が目指す「最高の先生」へ。その道のりは長く、険しいかもしれないが、彼女の実体験に裏打ちされた情熱と、この試験で得た揺るぎない自信があれば、必ず成し遂げられると信じている。

頑張れ。君の未来は、ここから始まる。

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国境を越える絆:安養市クンミョン高校との交流協定締結

11月26日(水)국경을 넘는 유대: 안양시 금명고등학교와의 교류 협정 체결

  本日、韓国安養市より、クンミョン高校のチェ・ギョンホ校長先生をはじめとする関係者の皆様を本校にお迎えし、「交流校協定」の調印式を執り行いました。海を越え、はるばる本校までお越しいただいた皆様に、心より感謝申し上げます。

   協定調印式:歴史的な署名
  本日はまさに歴史的な一日です。これまで準備を重ねてきた「協定書」に署名し、両校が正式に手を取り合えることを、校長として大変光栄に存じます。式典では、この協定が持つ「本質的な意義」について、以下のメッセージを共有いたしました。

  日本と韓国は、最も近い隣人です。しかし、近くて深い関係だからこそ、実際に顔を合わせ、言葉を交わし、互いの文化や考え方に触れることが何よりも大切だと私は信じています。今回の協定をきっかけに、本校の生徒たちが、クンミョン高校の生徒さんと友情を育み、互いに励ましあいながら成長していくことを強く願っています。言葉や習慣の違いはあるかもしれません。しかし、同じ時代を生きる若者として、心の通った交流が生まれることは、彼らが将来、国際社会で活躍するための「大きな財産』」となるはずです。

  本日の協定締結は、両校の輝かしい未来への「第一歩」です。この絆が、末永く、そして深く続いていくことを確信しています。グローバルリーダーシップの育成とともに本校の国際交流をさらに推進してまいります。

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