校長日誌

2023年12月の記事一覧

2023/12/28(木) ピンからキリまで

 お正月が近づきました。お正月らしい風情としてかるた取りがあります。「かるた」は漢字で「骨牌」「歌留多」などと書きます。もとから日本語と思いきや、「カード」を意味するポルトガル語由来のことばです。札(ふだ)に絵が描かれ、絵合わせをはじめいろいろな遊びができるカルタは室町時代にポルトガルから伝わりました。

 その後、各地でいろいろな「かるた」が作られました。江戸時代になると小倉百人一首、源氏物語、古今和歌集と結びついた歌かるたも作られました。いまの「花札」の原型ともいえる安土桃山時代の「天正かるた」もその一つです。

 ご存じのとおり、花札では1月の松から12月の桐まで各月を花で表します。が、桐の花は夏の季語になっているとおり、冬には咲きません。

 天正かるたでは1の札を「ピン」、12の札を「キリ」と言っていたようです。1の札をピンというのは、ポルトガル語「ピンタ」(=点)に由来し、キリのほうはポルトガル語「クルス」(=十字架)とも日本語の「切り」(=終わり~現在でも「きりがない」などといいます~)とも諸説ありますが、「キリ」を「桐」にかけたしゃれだったようです。

 本年もお世話になりました。受験生のみなさんにはお正月といってもゆっくりできないかもしれません。風邪などひかないようお過ごしください。

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2023/12/22(金)二学期終業式校長あいさつ「わざわざ意識して、新鮮な感動や失敗を重ねて悩みましょう」

 インフルエンザや溶連菌の感染拡大が続いています。年末年始は感染がさらに拡大しないかと心配です。各自、考えられる予防策を続け、感染が広がらないよう協力してください。

 さて、「いつものように所高に通学する」「大会や受験などで、あまり行ったことのない会場に行く」どちらが疲れますか。

 初めての場所に行くためには、何時の電車に乗れば~最近は路線検索で電車に乗る人が増えたというので駅のホームから時刻表が消えています~降り口はどっち、どの辺に立っていればスムーズに降りられるだろう、大げさかもしれませんが、ふだんの通学の何倍も考えることが出てきます。

 いっぽう「いつものように通学」のときはそんなに考えないと思います。見ている番組の天気予報を見たら家を出る、駅に着くといつもの電車が来る、3両目の二つ目のドアから乗ると所沢でちょうど階段近くに止まって…という職人芸のようなことをやっているのに特別疲れないのは、これら一連の作業を意識しないでやっているから。

 こんな感じで行動を刷り込んでしまうと、ルーティンワークとなって意識しないでもできるようになる、というわけです。習慣的な行動には、脳にあまり負荷が掛からない仕組みになっているのです。これはたいへん合理的でもあります。

 話はそれますが、会話のとき、どう発音するかは意識に上らないと思います。たとえば、日本語の「ん」の音はうしろに続く音によって発音が変わるのですが、気にしたことありますか。例えば、「センパイ(先輩)」「サンマイ(三枚)」の「ン」は上下の唇が閉じる音[m]として発音されます(両唇音が「ン」に続くとき)。「カントク(監督)」「アンナイ(案内)」の「ン」は舌先が上の歯茎につく音[n]として発音されます(歯茎音が「ン」に続くとき)。さらに「オンガク(音楽)」「サンカ(参加)」の「ン」は舌の奥が軟口蓋につく音[ŋ]として発音されます(軟口蓋音が「ン」に続くとき)。英語では、唇が閉じる音[m]歯茎につく音[n]など発音を区別しないと意味が通じなくなります。(「sum」(=合計)「sun」(=太陽)「sung」(=歌った)など)

 発話のパターンは話す人によってまったく異なります。話を聞いて0.何秒かで返しますね。ということは聞き終わってから理解を始めるのではないということです。聞く側は、どの瞬間に注意を向け、何を聞き取って推論の手掛かりにしているのでしょうか。物理現象としての音は同じでも、友人が出す音なら気にならないのに、知らない人や嫌いな人が出す音を不快に感じるなど、音の大きさや高さとは別に受け取りかたが異なることもよく経験します。

 高度な情報処理がおこなわれていることは想像がつきますが、わからないことがたくさんあります。たぶん、音を聞いて聴覚だけで判断しているのではなく他の感覚からの情報を統合して、情報処理を行っているのだと思います。情報処理の内容によって脳の受け持つ部分が違うと聞きます。無意識の行動では脳の情報処理が行われにくいと思われます。意識して異なる動きや考えを取り入れると、脳の機能を活性化させ、情報の処理能力を高めることになりそうです。

 ある意味、脳というのは負担が少なくなるように働く「省エネ機械」と言えます。初めての経験には新鮮な驚きを伴います。失敗して悩むことも多いです。しかし、驚きが薄れ「普通の」出来事になれば、改めて意識することもなくなり、ルーティンワークと同じになってしまいます。筋肉と同じで使われる部分は強化されるけれど、使われない部分は淘汰されるといいます。

 若い頃の記憶は比較的忘れないで覚えていられるのに、最近は覚えられないし、忘れるのが早い感じがします。年のせいだと思っていましたが、研究によると記憶能力そのものは75歳くらいまでは落ちないのだそうです。経験を重ねることで新しい経験や新鮮な感動が相対的に少なくなり、ルーティンワーク化することや、「年を取ると忘れやすい」と刷り込まれることで記憶しようという「気持ち」のほうが萎えて、一気に「記憶力」が失われるということだそうです。

 脳は省エネに動くとなれば、「いつもと同じ」をやめ、ルーティンにしないよう意識的に脳に負荷をかけてやる必要があります。負荷を一度にかけると壊れてしまうので、継続してちょっと強い負荷をかけ続けることです。「じぶんにはできない」というくだらない先入観を捨てて、初めての経験、新鮮な感動や失敗を重ねて悩むことです。

 それではよいお年をお迎えください。

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2023/12/19(火) 弁護士による人権教育講演会を行いました

 12月19日(火)弁護士法人西むさし法律事務所から、本校の卒業生でもある小林善亮弁護士にご来校いただき「成年になるなら知っておきたい法知識」と題してご講演いただきました。契約する意味、ネットでの誹謗中傷も刑事事件になりうること、選挙と民主主義のポイント、法的なものの考え方を知るべきことなど多岐にわたりました。そのおおもとには憲法があり、憲法が人権を侵害する法律を作ることができないようにしばっていることなどをお話しいただきました。

 世の中にはいろいろな人がいて面白いけれどしんどいこともある。法的なものの考え方をたどるとトラブル回避や解決に役立つ。自分と違う人と折り合いをつけて生きていくために、言いにくくても意見を言わないと自分も周りも幸せになれない。お互いの違いを認め、意見を言い調整し物事を決める所高での経験は貴重なのだと、所高生へのエールで締めくくっていただきました。

 小林先生、貴重なお話をいただき、ありがとうございました。

人権教育講演会 人権教育講演会

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2023/12/19(火)去年今年(こぞことし)

 この時期、新聞やテレビなど一年を振り返る企画が増えてきました。

 明治から昭和にかけて活躍した俳人高浜虚子(たかはまきょし)に「去年今年貫く棒の如きもの」という句があります。「去年と今年という時間の区切りを飛び越え貫いている棒のような何かがある」というのです。戦前までは年齢も「数え年」ですから、暦が新年に変わると(誕生日に関係なく)同時に1つずつ歳を重ねました。いま以上に時の区切りが大きく感じられたはずですが、自分の中にある「棒のように曲がらない、まっすぐな何か」とは何なのでしょう?

 このことば、現代では「ゆく年くる年」という感じに近いかもしれませんが、「ゆく年くる年」はどちらかというと去っていく年のほうに焦点を当てている感じがあります。「去年今年」のほうは、新年の季語でもあり、一夜にして去年と今年が入れ替わり「『去年』は新年に変わり、先刻はもう去年になったのだ」と年の改まりを実感するニュアンスのように思います。

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2023/12/16(土) 赤穂浪士

 1702(元禄15)年12月14日、『忠臣蔵』で有名な、大石内蔵助(おおいしくらのすけ)が率いる赤穂浪士四十七士が江戸・本所の吉良上野介(きらこうづけのすけ)邸に討ち入り、主君浅野内匠頭(あさのたくみのかみ)のあだを討ちました。

 ここで、「赤穂浪士」の部分にふりがなをつけなかったのには、ちょっとしたわけがあります。昭和61(1986)年内閣告示「現代仮名遣い」を基準に「あこう(ろうし)」と書くのが一般的です。「現代仮名遣い」によると、第1の5に「オ列の仮名に『う』を添える」とあります。「コー」「ロー」という音から「あこう」「ろうし」になります。が、「あこお」も間違っているといいにくいところがあるのです。兵庫県の地名「赤穂」は、歴史的かなづかいだと「あかほ」になります。古文の時間、最初に歴史的かなづかいを現代かなづかいにするのを学びますが、「かほ(=顔)」は「かお」になります。国語辞典を引くと「こうり(=高利)」と「こおり(=「氷」は歴史的かなづかいで「こほり」と書く)」とを書き分けますが、「あかほ」の「か」が長音化したと考えると「あこお」が正しいともいえるわけです。ちなみに「こおり」と書くのは、「現代仮名遣い」では「表記の慣習による」となっています。

 などと書いていたら、討ち入りのことを書くスペースがなくなりました。

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2023/12/15(金)歓迎光臨! 台湾・三重(サンチョン)商工高校と交流

 12月14日(木)台湾・新北市立三重(サンチョン)高級商工職業学校の李立泰校長先生・生徒さん34名が本校に来校、日本語のミニレクチャー、茶道や弓道、テニス、バドミントン、卓球などの部活動体験、レクリエーションを通じて生徒との交流を楽しみました。なごりは尽きず、予定時間をオーバーしての出発となりました。

 一行は12月11日(月)に来日、本県では川越蔵造りの街並み散策、秩父神社などを参拝し1泊のホームステイなどで過ごし、ほかに軽井沢でのスキー体験、浅草、TDLなど盛りだくさんの内容で17日(日)に帰国するそうです。

 楽しい時間を共有することができました。ご来校いただき、ありがとうございました。

台湾・三重商工高校との交流 台湾・三重商工高校との交流

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2023/12/13(水)12月13日は「煤(すす)払い」

 期末考査も最終日となりました。朝早くから自習をする生徒が多くみられました。西武新宿線が遅れているようですが、遅刻者はほとんどいないようで安心しました。実力を出し切ってほしいと思います。

 さて、12月13日は古くから「煤(すす)払いの日」とされています。現代の大掃除につながる行事ですが、古く、煮炊きの火には薪や木炭を使ったので、台所をはじめ家のあちこちがすすで真っ黒になっていました。時代が下っても、たとえば映画『となりのトトロ』では「まっくろくろすけ」が出てきますね。すすを払う意味合いから、むしろ天井や柱などを掃除するのだとか。江戸時代には庶民にもすす払いの習慣が広まったようです。

 お正月には「歳神さま」を祀ります。まずは1年の汚れを落とし、清らかに新年を迎えるための大事な儀式だったのです。ここから新年に向けてさらに忙しくなります。ちなみに、門松や鏡餅なども歳神さまを迎えるためのもの。

 本校でもこのあと大掃除が予定されていますが、現代の「大掃除」にそんな背景があったと思うと、おろそかにできないですね。

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2023/12/8(金)12月9日は漱石忌(そうせきき)です

 あす12月9日は明治時代の文豪・夏目漱石(1867~1916)の命日・漱石忌にあたります。この(大正5)年12月9日に49歳で死去、ことし没後107年にあたります。

 私事ながら、しばらく前から、高校時代の恩師の奥様やそのご友人の方々と『草枕』を読んでいます。スタジオジブリの宮崎駿監督(本校卒業生の宮崎吾郎監督の父上)も「『草枕』が大好きで、飛行機に乗るときは必ずこれを持って行きます」と雑誌の記事にありました。「草枕」を国語辞典で引くと「《昔、旅で、草を束ねて枕にしたことから》旅寝。旅行。」とあります。地元が舞台と思われる『となりのトトロ』のねこバスや『魔女の宅急便』など時空を超え駆ける場面がありますが、影響を受けていたのかもしれませんね。

 漱石は39歳で『草枕』を発表します。原稿用紙にして250枚ほどの作品を十日ほどで書き上げたといいますから驚きです。いまは『こころ』『現代日本の開化』に傾いていますが、かつて『草枕』は国語授業で多く読まれたと聞きます。「智に働けば角が立つ。情に棹(さお)させば流される。意地を通せば窮屈だ。とかくに人の世は住みにくい。」という一節が知られていますが、読めば読むほど謎と新たな発見が出てくる作品です。

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2023/12/5(火) 今年を象徴する「闇バイト」

 一年を象徴する言葉を選ぶ「2023新語・流行語大賞」が発表されました。ことしのトップテンに選ばれた「闇バイト」は「ブラック企業」などということばと同様、アルバイト先企業に関する話のようでもありますが、バイトとは名ばかりで、内容は犯罪行為そのものです。

 楽に稼げる仕事だと勧誘され、気軽に応じてみると多くは詐欺の共犯(「受け子」)です。お金をだまし取る相手から現金を直接受け取ったりする役目を言いつけられます。役目がうまくいくと、脅されるなど逃げられないようにされ、警察に逮捕されるまで使われ続けます。約束の報酬はもらえないことがほとんどです。(そりゃ、そうだ)犯人にとっては、バイトだと寄ってきた人間はいつ警察に捕まってもいい「使い捨ての道具」みたいなものです。

 先週、所沢署の方からお話を伺う機会がありました。孫や甥(おい)などを装って電話し、信じた被害者からお金が必要だとだます詐欺の手口があります。県内でも被害が多いそうで、闇バイトに関係しないよう犯罪の恐れのある少年に積極的に声をかけていく方針とのことでした。

 また、中高生の子どもや孫(あなた)からご家族に注意するよう言ってもらえると、被害に遭う前に気を付けてくれると思うので、ご家族で話題にしてほしいとのことでした。

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2023/12/2(土) SNSでなくても

 やや旧聞に属することですが、NTTドコモが行った「中高生のスマホ事情」調査(2020年)によると、これまでにSNSに顔や制服の写った写真・動画を投稿したことがあると答えた人が4割超、SNSに自分の学校名を書いて投稿したことがある人も15%だといいます。学校でもスマホ安全教室をはじめ繰り返し注意していますが、ネット空間をのぞくと今でもかなり多いようです。

 個人情報を載せると、空き巣やストーカーなど犯罪に遭うリスクが高くなります。ネットでは「知らない人に教えてもよいこと」だけを投稿するのが安全です。部活動やクラスの人間関係や行事などほんのちょっとした投稿が自分や他人の個人情報を垂れ流すことにつながります。ネット上には投稿を掛け合わせて、個人情報を特定しようとする人もいるので、投稿内容に注意しましょう。

 SNSではありませんが、通勤の電車で、リュックやカバンなどにかわいらしいパスケースを下げている高校生を見かけます。パスケースから定期券がはっきり読めることも。定期券には学校と自宅の最寄り駅と名前と年齢が印字されているはず。これもリスクが高い行動です。(写真や実在の商品とは関係ありません)

リュックにパスケース リュックにパスケース

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