2023年11月の記事一覧
2023/11/29(水) 「大丈夫」考
ある先生と「気軽に『やばい』ということばを使ってしまう。反省しないと。」という話題になりました。「生徒たちから『やばい』ということばをよく聞く。もともとそんな意味ではないはずなのに『すばらしい、おいしい』に近い、いい意味で使っているようだ。生徒だけでなく、教員の私たちも。」
古文の「いみじ」「ゆゆし」なども今の私たちにとってむずかしいことばです。「程度がはなはだしい」ことを表し、いい意味にも悪い意味にも使われるように見えることから、どう解釈したものか悩むこともあるのではないでしょうか。平安時代の宮廷など「サロン」といってもいいほど閉じた空間で、文化や価値観を共有しているところで使われています。千年も隔てた私たちは古文の時代の文化を持っていません。「やばい」も文化を共有している人の間で使われ始めたものだと思います。ことばが発せられた状況から意味やニュアンスを共有することができた。だから広まったのだと思います。
コンビニなどで「お弁当、温めますか?」「大丈夫です。」というやり取りを見聞きします。「温めなくてよい。(断る)」という意味のようです。では「追加料金がかかりますが、このプレミアムプランはいかがでしょうか?」「大丈夫です」というやり取りはどうでしょうか。
もともと「丈夫」(「じょうふ」と読みます。「ぶ」ではないので念のため)ということばがあります。ますらお、力強い男子、ということです。そのくらいしっかりしているというところからきたのでしょう。この「大丈夫」には少なくとも2通りの意味に受け取る要素があります。「(追加料金がかかっても)大丈夫=承知した。(受け入れる)」「(追加料金がかかるなら)大丈夫=いらない。(断る)」
文化を共有していれば意味の取り違いは起きないでしょうが、手軽なことばだからと乱用すると、初めて会った人などから意向を逆に受け取られてしまうかもしれません。意図的に曲げて受け取るような人もいるようですし。時と場に応じた意思表示のことばを身につけておく必要がありそうです。