日誌

晴れのち曇り 加治丘陵メガソーラー・サッカー場建設予定地の地層

はじめに

 我々地学部は、昨年度まで富士山宝永噴火の研究を中心に活動していましたが、COVID-19により、活動の大幅縮小を余儀なくされたため、富士山での現地調査、外部機関での化学分析等が行えずにいます。また、この研究の中心となっていた3年生の引退、大変複雑化する研究内容により、我々自身が理解できなくなってきたため、2019年2月の埼玉大での発表をもって事実上途中終了しています。代わって、このような状況下で遠出をしなくて済む、そして難易度の高い研究を伴わない、ということで、最近は狭山丘陵、加治丘陵、入間川など地元の地質について勉強しています。

 その一環として今回、2020年10月4日の午前中は、入間市仏子にある入間川の河川敷で地質調査を行いました(この内容については、別記事を参照してください)。午後は、この河川敷からほど近い、加治丘陵の一角「飯能市阿須山中」で巡検を行いました。この記事ではそちらの方の記録を載せます。


今回の概要

 加治丘陵は、東京都青梅市、埼玉県入間市、飯能市の3市にまたがる丘陵です。西側の青梅市成木、小曽木付近で関東山地へと移り変わっています。ここが陸の孤島ともいわれる狭山丘陵との大きな違いです。

 その加治丘陵の一角、飯能市阿須山中(←は地名、クリックで建設現場周辺の地形図)では現在、飯能市主導によりメガソーラー発電所・サッカー場が建設されています。しかし、市民団体がそれに対し「環境破壊だ」として反対の意見を表明しています。今回、我々は当地の現地観察をしました。

 当計画については、上記のリンク、飯能市のホームページ・広報誌 等を参照ください。

 なお、観察した当時(昨年10月)はまだ計画の段階でしたが、その翌月から工事が始まっています。そのため、現在は以下の写真のような光景は見られず、そもそも当地の立ち入りもできません。本来であれはすぐに記事を上げるべきですが、諸般の事情により、この記事とこれ以降の記事の作成、公開が大幅に(3か月程度)遅れています。ご了承ください。


現地観察の記録

 阿須の交差点を南(入間市)方向に進み、すぐの長澤寺の丁字路を右に曲がって直進すると、下の写真の場所にたどり着き、また少し進むと左側に建設予定地が見えてきます。

↑建設予定地の地形(国土地理院の標高データDEM5を元にカシミール3Dで作図)。中央の赤い線で囲まれた領域が予定地。上が北方向。右下の線は八高線と県道。

↑サッカー場への取り付け道路の建設が始まっている。

 

↑送電線鉄塔巡視路兼ハイキングコースを行く。道の両側とも建設予定地。

 

↑谷底へ降りる。ここから先は建設予定地内部。

↑タヌキ?の巣穴。中にタヌキがいるのかどうかは不明。

 当地は山林なので当然、上の写真のように谷と尾根が存在します。しかし、サッカー場は平らなので、両脇の尾根の土砂を削って谷に落とし、谷を埋めて平地にする(このようにして造成した例としては、同じく飯能市の美杉台、その奥の大河原工業団地などがある)わけですが、一般的に尾根だった部分より埋めた部分のほうが地盤が弱いと言われています。例えば川原に大きめの穴を掘って埋めて、数年後また来てみると、埋めたはずの穴が復活することがあります。
 この記事をご覧になっているあなたが、今どのようなライフステージにいらっしゃるのかは分かりかねますが、もし新しく土地を買う際は、そこがかつてどんな場所であったのか、古い地形図や航空写真、土地利用図などをあたるぐらいはしたほうが良いかもしれません。場合によってはその場所の地名(例:池・川・沢・海・渡・流・湘・島・崎・泉・谷・田・鷺・萩 などは水を表す)も参考になる可能性があります。土地のような超高額の買い物は、失敗すると後で大変なことになるかもしれません。

↑谷底の無名の沢。工事が始まれば埋められる。

 ここでは飯能礫層を発見しました。飯能礫層は、今から200万年ほど前に、当時の河川によって関東山地から運ばれてきた礫が堆積したものです。・・・それ以上の説明については午前中の記事を参照願います。

↑崖を掘って地層を観察する当部の前顧問。

 工事は始まっていないので、今は何の変哲もない山林ですが、場所によっては建設予定地(の境界線)を示す、黄色や赤色のスズランテープが張られています。

↑テープが張り巡らされている。中央にU字溝が設置されているが、この工事とは関係ない模様。

↑下山後。左から、建設予定地->唐沢川->市道->ラジコンサーキット場。手前が県道方面。今は、唐沢川より左は木で覆われているが、計画通りだと堤防のようなコンクリートの壁が出現し、その向こう側がサッカー場となる?


まとめ

 計画内容と実地観察からすると、環境破壊という意見があってもやむを得ないと思いました。もちろん、放置された山林も問題があるとはいえ、当地はかつて林業で栄えた人工林・・・というわけではなくほぼ自然林です。入間市、青梅市側の加治丘陵のように、(事実上の)自然公園化、というわけにはいかなかったのでしょうか。自治体が自然、森林に対しどのような価値観を持っているかで、それらの行く末は変わってきてしまうということになります。
 狭山丘陵のように保護されすぎて(都の水源というのも影響してはいます)あちこち鉄条網、立入禁止というのもどうかと思いますが、やはり保護されずにどんどん消える山林というのは残念極まりません。

 メガソーラー問題はこの飯能だけでなく、北海道から九州まで全国各地で起こっています(近隣では日高市など)。

 今後も加治丘陵の山林は消えていってしまうのでしょうか。


参考文献

当問題の概要・・・飯能市、市民団体のそれぞれのHPに掲載されているPDF等の資料
地層の説明・・・入間市博物館・入間昔むかし アケボノゾウの足跡(2003)