校長日誌

2024/3/9(土) 高校76期生に向けて、卒業式での校長式辞です

 「三寒四温」のことばのとおり、雪の降るような寒さとおだやかな暖かさを繰り返しながら確かに春の訪れを感じる陽気となりました。このよき日に、同窓会長様をはじめ、平素から本校にお心を寄せていただいている学校評議員の方々、保護者のみなさまと御一緒に高校76期生339名の卒業をお祝いできることを喜びたいと思います。ご卒業おめでとうございます。
 ふだんは自然の恵みを享受していますが、自然は時に牙をむき、日々の営みが突然断ち切られる不条理も見てきました。年頭に起きた大きな災害には、ここにご出席の方に縁のある方が被災されているかもしれません。被災者のかたがたにはお見舞い申し上げ、一日も早く生活を立て直すことができますようお祈りしたいと存じます。
 よく「世の中は甘くない」と言われます。「世間は甘くない」「もっと現実的に考えて」などのことばはいたるところで聞かれます。相談された人も何かアドバイスしたいという善意からの発言だと思いますが、「世の中」ということばを使っていることで、それが普遍的なものであるように感じてしまいがちです。冷静に考えると、アドバイスしてくれる人が見てきた「世間」や「世の中」と、これからあなたが味わうであろう「世の中」とは、同じということはありません。時代背景も異なります。
 このことばをご親族からかけられたとすれば「世の中は厳しい」ということばを通じて、努力を続けてほしい、社会にでる覚悟を自覚してほしいということであり、とくに親は子どもの幸せを第一に考えるものですから、字面ではなく意味するところをかみしめてほしいものです。
 「コント赤信号」でデビューし、俳優であり演出家でもあるラサール石井さんは、中学時代の塾の先生のことばを引いて「世の中ほど甘いものはない」と言います。そのわけは、失敗したとしても何度でもやり直せるからだというのです。私もその通りだと思います。自分が頑張ってきたことが失敗に終わったように見えても、こうやると失敗するということが「分かった」ことは収穫です。違うやり方をとればうまくいく可能性がある。少なくても失敗の要素を一つ取り除いたわけです。失敗したことに向き合わずに自分はダメだと挫折し、失敗のまま放置することが問題なのであって、失敗のように見えるだけで、失敗と決まったわけではありません。最後に成功すれば、もはや失敗ではなく、成功への道すじ・過程なわけです。
 所沢高校で学んだ自主自立、自分で考えて行動し、責任も自分でとるという姿勢で生きていけば、その人は伸びるし、この先も心配ありません。成功体験しかしてこなかった人は一度追い込まれただけで弱く折れてしまいます。失敗や挫折を経験した人には、そのまま放置したり、逃げたりしなければ、新しい視点と耐久力が付け加わります。自分の感覚を信じましょう。その時できることを後回しにせず、誠実にやりましょう。ご活躍を期待しております。
 保護者のみなさまには本日のお慶びとともに、これまで本校にお寄せいただいた御厚情に感謝申し上げます。今後も、時代に立ち向かい、自ら考えて行動できる人物を育てるという期待に応え、教職員一同、卒業生や生徒にとって心のよりどころと誇れる学校づくりに努めてまいります。
 高校76期生の前途が健やかで幸多きことをお祈りし式辞といたします。

  令和6年3月9日              埼玉県立所沢高等学校長 内田 正俊