校長日誌

2024/11/19(火)秋と春とを比べると?

 きのうあたりから急に寒くなってきました。ただいま定時制の3年生は修学旅行で関西に行っています。行きの新幹線では美しい富士山が見えたそうです。今朝の富士山は頂上近くが真っ白になっていました。17日(日)に見たときは雲も多いながら、雪の白さがわからない感じでした。いよいよ秋も終わりですね。
 『万葉集』に「春の花のさまと秋の葉のさまとを競わせたら」との御下問に額田王(ぬかたのおおきみ)が応えた和歌があります。

 冬ごもり 春さり来れば 鳴かざりし 鳥も来(き)鳴きぬ 咲かざりし 花も咲けれど 山を茂み 入りても取らず 草深み 取りても見ず 秋山の 木の葉を見ては 黄葉(もみじ)をば 取りてそしのふ 青きをば 置きてそ歎く そこし恨めし 秋山われは(巻一・16)

(大意)春になると鳥も来て鳴き、花も咲く。山は茂っており手に取れず、草も深く手折って見ることもできない。秋の山は葉を見る、もみじを手に取り賞賛し 青い葉はそのままにして嘆く。そこに恨めしさを覚える。秋の山こそ私は。

 秋の色づく美しさの勝ち。葉の色は遠くから見るのが美しく、花の色は手持ちで見るのが美しいのだが「山が深く手で取れない」から秋の勝ちだというのです。鎌倉時代の兼好法師は『つれづれ草』で花見に来て枝を折って騒ぐ人を非難しています。(137段『花は盛りに』)花は遠くから眺めるのがよい、というのです。「春と秋のどちらが好き?」はいまでも話題になりますが、奈良時代『万葉集』まで遡ることができるのも驚きです。