校長日誌

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2025/3/24(月)【3学期終業式・校長あいさつ】成功のストーリー

 年度の締めくくりに、「成功のストーリー」について考えたいと思います。

 成功談を本や広告で見ると「この参考書で有名大学合格」「子ども全員を有名大学に導く」「1日15分で身につく語学力」「病気にならない食事」「リバウンドしないダイエット」「絶対もうかる投資」など、これはいい、自分も同じようにしようと考える人もいるかもしれません。また、過去、自分自身に成功体験があったりすると、同じやり方で乗り切ろうとする人もいるかもしれません。うすうす感じているでしょうが、そうした行動が報われることは少なく、多くの場合「こんなはずではなかった」という結果に終わります。なぜでしょうか。

 まず、状況の違いがあります。家族、生まれ育った場所から、時代やトレンドの変化、取り巻く環境、経済力など何から何まで異なっています。また、巷に流される成功事例には、公表するだけの何らかの意図があります。評判のラーメン店がレシピを表に出さないように、成功要因をただで積極的に公表するとは考えにくいです。

 次に、成功に至った要素が本人なりのストーリーに仕立てられている、という点です。事例を語る本人の思い込みの場合もあるでしょう。ある行動を行ったことで受験に合格したという結果を得たとしても、本人も気づいていない他の要因があったのかもしれません。

 これが自然科学であれば、ある働きかけをして結果が得られた実験で、前提条件が同じであれば何度試しても同じ結果が得られます。同様に見えるシステムや前提が、実態として全く異なっている場合を見落としがちです。

 失敗した場合の「原因」は、あります。複雑に絡み合っているものの明確に存在します。交通事故にしても、スマホを見ながらの無謀な運転「だけ」では起きないかもしれませんが、軽重は別として失敗ないし起きてしまった事故の要因は存在します。影響を与える条件が複雑に絡み合い、個別事例ごとに状況が異なるため、要因を一つに絞ることはほとんど不可能なだけです。むしろ成功したのは、失敗につながる原因が偶然にも発生しなかっただけ、とも言えます。

「なぜ失敗したのか」「どこを改善すれば同じことが起こらないか」を考えれば、失敗を繰り返すことを避けることができ、自分のレベルアップにつながります。好き好んで自分の過ちを公表する人は少ないので、他人から失敗事例を学ぶことは難しいです。想像力を働かせて考えるしかありません。

 何かの巡りあわせで失敗事例を得ることがあれば、何が失敗を招いたのかよく傾聴し学ぶべきです。自分では経験したことがない行動を実行に移そうと決意する前に、成功事例を見て安心したいという気持ちはよくわかります。

 実績のある過去のやり方であればリスクを取らずにすみ安全だと感じる場合もあろうと思います。リスクに向き合い、要因を取り除くことをせず、リスクを遠ざけるだけであれば、どこかでリスク・危機のほうから近づいてきます。

 成功事例がある「から」やってみようは無謀ですし、失敗の事例がある「から」やめておこう、という判断も安易です。

 失敗を繰り返そうが、最後に成功すれば、それは成功なわけです。自分の人生の経営者は誰でしょうか?人生を決めていく、状況を判断し決断していくのは自分しかいないわけです。

 4月には新入生も入ってきます。所高生の強みは、すぐに火がつく沸点の低さ、フットワークの軽さ、人々をつなぎとめるフック力と繰り返しお伝えしてきました。みなさんの今後の成長を楽しみにしています。

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